人生ミルフィーユ

日々のふとした瞬間の重なり。

あたしの白い部屋

珍しく仕事が早く終わらせた。

3時を過ぎたあたりから

もう今日は集中できない、

脳からそんな信号が出ていたけれど

それに気づかないふりをして

カタカタとキーボードを打ち

眉間にシワを寄せて画面を睨んで過ごした。


木曜日はにくらしい曜日だ。

週の後半だ!と張り切ることもできれば

あぁ、まだ金曜日がある、と

憂鬱にもさせる。


ちょうど片道一時間でうちに着く。

ドアノブに鍵ではなく

定期を入れたパスケースを近づけて

自分の疲れの度合いを思い知らされる。


マイブームのたんぽぽコーヒーを入れ

冷蔵庫に入れてあるチョコレートを

包みの上からひとかけ割って口に運ぶ。


塩キャラメルの有機チョコレート。

カカオバターの甘さに混ざって

粒の大きい塩が一粒ずつ

塩味を主張する。


壁が真っ白な部屋。

冷蔵庫も衣装ケースもラックも

すべて白。

テーブルは白いガラス製。

その中で

エアコンが冷気を吐く音と

冷蔵庫のブーンという音だけが響く。


部屋干しの洗濯物、

積まれた書籍、

朝に出かけたままになっている

化粧道具。


私の部屋。

私の日常。

私が好きにできる世界。

舌が少しひりつくぐらいの

熱いたんぽぽコーヒーが

体の真ん中を通り過ぎると

足のつま先から徐々に

そこに本来あるべき何かを

取り戻したような感覚になる。


1日中、私は私なのだけど

そのうちの、こんなふとした瞬間、

私は私を取り戻す。


今日はもう寝よう。また明日が来る。