人生ミルフィーユ

日々のふとした瞬間の重なり。

脱・母娘の呪い

子供にとって母親の影響力は大きい。

家庭で過ごす時間の比重が

父親より大きいことによるのかもしれない。


私はそういう意味では母っ子だ。

料理が上手で、自慢できる人だし

不自由なく、私を育ててくれた。


感謝している。とてもね。

でも、今になって思う。

母のことを惨めな人だと思うようになったのは

一体いつからだっただろう。

その気持ちに常に鷲掴みにされていた。


母は孤独だった。

家のことに無関心な父とは諍いが絶えず

父にどんなひどいことを言われたのか

私たちの物心がつかないほどの過去まで遡って

事細かに、何度も話した。


実際に父の母に対する態度はひどいものだった。

今時で言う、完全なるモラハラだ。

私が中学生くらいまでは

母もそれに大声で応戦していたが

いつしか、父の怒鳴るのに対し

突然人形にでもなってしまったかのように

ドローンとした顔をし

部屋に立てこもったり、家出をしたりするようになった。


無関心を装うことで、自分を守るようになった母を見て

私の中で父に対する嫌悪感が募り

母をこれ以上に孤独にはしておけないという

焦燥感が募った。


祖母が認知症になった。

兄が引きこもりになった。

母にとって、心労が増える出来事が

我が家には多すぎたことも

その感情に拍車をかけた。


相変わらず、

母は自分に対する父の悪態を

私にそのまま垂れ流す。

兄の気分が不安定なことの不満や

自身の子育ての過ちについて

私に同情を求める。

「私はお母さんの味方だからね」

「お兄ちゃんも子供じゃないからさ」

「お母さんよく我慢してるよ」…

私のこんな言葉に、

一時的にすっきりした気分になる、ってことを

何回も何回も繰り返した。


お母さんは、

離れて暮らす私の幸せだけが支えと言いながら

そうやって幸せになろうとする私に

罪悪感を与えて

私の心を、頭の芯を縛り付けてるの

わかってるかな。


私、ちょっと疲れちゃったんだ。

結婚生活30年超、

お父さんと、理解し合うとか

妥協点を探り合うとか

そういう努力はした?

お兄ちゃんとどう関わっていくかなんて

本来は私に相談することじゃないよね?


お兄ちゃんは、私みたいに強くなかった。

だからお兄ちゃんは自分なりに

負の空気に包まれた家の中で

自分を守ってるんだと私は思うよ。


私は結婚も子育ても経験してないから

「お母さんなりに頑張った」と言われれば

何も言えないけどさ。


家族それぞれ、見えてる景色が違うから

自分の基準を相手に求めるのは

本当に難しいね。

みんな

こんな状態を望んで過ごしてきたわけじゃないし。


でもねお母さん

とりあえず、私は疲れちゃったんだ。

あなたは不幸の渦の中にいると言う。

だけどそれはね

あなたの一つ一つの

行動の選択の結果だよ。


こんなことを言うと

「家族のために自分を犠牲にしてきた」とか

あなたは感じるのかな。

それとも

「頭の良いあなたにはわかりっこない」かな。


どちらも、現実に返ってきそうな答え。

私はそれが、本当に怖いんだ。

だから、事実をあなたに突きつけることは

残酷すぎると思っちゃうんだよね。


私は、私の人生を生きるよ。

幸せが何なのかをしっかり考えながら。

あなたの時間とともに

私の時間も、同じだけ流れているからね。


あなたに笑顔になってもらいたかったのも本当。

だけど、それで自分が磨り減っていくのを

気づかないふりして過ごすのは

もうやめるんだ。


消せない罪悪感を抱えてるからこそ、ね。