人生ミルフィーユ

日々のふとした瞬間の重なり。

白い部屋

あたしの部屋は、一言で言えば白い。キッチンとリビングを隔てるドアとカーテンがグレーなことを除き、白い壁、白い天井、白い冷蔵庫、白いタンス、白・白・白である。友人が言うには「ビジホの部屋並みに生活感がない」というこの部屋で半月ほど療養した。…

帯状疱疹で、一皮剥けたい②

一人暮らしの自由度は計り知れない。学生時代も加えれば私はもう随分、それを謳歌してきた。ああ神さま、これは決して私だけの贅沢ではないはずです。特段の悪行もせず地味に、ふつうに、サラリーマンをしてきました。ほどほどに、です。帯状疱疹になる由縁…

帯状疱疹で、一皮剥けたい①

数日間の体の違和感を経て、帯状疱疹なるものを発症した。たいして大きな病気の経験のない身体を、容赦ない痛みと夥しい数の水疱が襲う。苦痛に顔を歪めて医者へ行ったが、こういうときのストレス溜まってるんだよ、疲れてるんだよという診断ほど、救いには…

普通じゃないから、好きにさせてよ。

【「普通」って大嫌いだ】芥川賞受賞作品「コンビニ人間」を読了。ここ一年くらい、仕事関係の書籍とは別に意識的に一定量、小説を読むことにしている。トランプ大統領就任後から特にだけど多様性がやたらと叫ばれてみんながみんな役割を持って輝かなきゃ駄…

当たり前の幸せをくれる人と言うものかこれが

11月に大阪への出張が決まった。ふと、学生時代の友人を思い出した。ゼミが同じだった彼女は、サークルの先輩であった旦那の転勤で大阪へ引っ越して行った。LINEで連絡を取ると旦那は大阪勤務の後に異動となり今は金沢にいるそうだ。ついでに、今は子供が…

比べずにはいられない性

年齢の割に稼ぐほうだ。あまり時間にも縛られずプライベートを楽しむゆとりもある。大好きな人もいる。近く一緒に住む。全部自分で選んでる。何をして働き、誰を愛し、どこに住み、全部自分で選んで、今の私がある。だけれど、全てを自分本意で決められるわ…

脱・母娘の呪い

子供にとって母親の影響力は大きい。家庭で過ごす時間の比重が父親より大きいことによるのかもしれない。私はそういう意味では母っ子だ。料理が上手で、自慢できる人だし不自由なく、私を育ててくれた。感謝している。とてもね。でも、今になって思う。母の…

正しく、美しくいようとしないこと。

新学期が始まるにあたり8月31日は高校生以下の若者が一年で最も自殺する日だということで年々、若者の心や悩みにフォーカスする特番が増えておりなんとなく眺めていた。典型的ないじめや先生の何気ない一言、理由はよくわからない 等学校に行けなかったり…

書くことと私

小学校低学年のとき宿題でもないのに絵日記を書き漁っていた。一年生の夏休みの読書感想文でたまたま大それた賞をもらった私はそれで気分を良くし毎日毎日絵日記を書いていた。一日七ページほど。その日あったこと、家族との会話、友達とのやりとり…まだ習い…

戒めと快楽の天秤

身近な人が命に関わる病気になったときその治療のために必要なつらい闘病生活を目の当たりにしたときああ、私は気をつけなきゃ、となぜかその事実を教訓にしなければいけない気持ちになる。その病気の原因も明確でないにも関わらずまず「気をつける」の矛先…

隙のないもの、壊しちゃえ

私の肌よりも断然きめ細やか目からその軽さがわかるほどにも関わらず中身はぎゅっと詰まっているだろう不思議などっしり感とくっきりはっきりしたフォルムもったいなくて崩したくない、というよりは嫉妬心からすぐさまかき混ぜたくなるかき乱したくなるほど…

国家単位の人ぐり、本気で考えません?

昨晩から名古屋で仕事。チェーンのコーヒーショップで仕事をしていると、店員が自動ドアに貼り紙をしているのが目にとまった。「本日は台風の影響により、13時に閉店いたします。ご理解賜りますようお願い致します。」この付近に近づいている台風に関する…

パンケーキ

東京の中でも日比谷近辺は異国を歩いているように感じる。石畳で美しく舗装された広い道乱れず並んだ並木いかにも都会、しかもごく限らせた人間にしか醸すことのできない洗練された空気をまとった人しか歩いていないように感じられるこの街。日比谷公園を散…

落ちてるようで落ちてない愛

テレビで観た、行列が出来るミートパイの店。いつもそこにあるであろう行列を仕切るポールが並んでいる。店はシャッターが閉まっているがあと10分で開店時間、どうせなら、と私が店の前に立つとただの通行人や、人との待ち合わせを装っていた人がキュー待…

人は自分の「普通」しか知らない

親友と一杯やろうと天ぷら屋に立ち寄った。注文した天ぷら盛合せを待つ間、瓶ビールを注ぎあい、時間を過ごした。彼は神主である。代々続く、自身の家の神社を継ぎ家族とともに暮らしている。私はサラリーマン家庭なこともあり、純粋な興味から宗教法人の経…

あたしの白い部屋

珍しく仕事が早く終わらせた。3時を過ぎたあたりからもう今日は集中できない、脳からそんな信号が出ていたけれどそれに気づかないふりをしてカタカタとキーボードを打ち眉間にシワを寄せて画面を睨んで過ごした。木曜日はにくらしい曜日だ。週の後半だ!と…

色褪せた花火

東京から実家に帰る新幹線の車窓。 乗車から時間が経つにつれ、吸い込まれるように暗い景色になっていくことで 日の入り時刻を過ぎ、 夜は夜らしく生活をしている町へ移っていくのだということを実感させる。 そう、夜は暗いもの。健全じゃないか。 昨日の夕…

まどろみ女

単調に繰り返すベルの音がだんだん大きくなる。向こうからだんだん近づいてくるみたいに感じるが、実際のそれは手を伸ばせば届くサイドテーブルの隅にある。スマホのアラームだ。私は目を閉じたまま「なんとなくこの辺」と思しきスマホまで左手を伸ばし、手…

がんを巡る母娘

「帰っていただけますか」玄関で来客を締め出そうとする母の声がする。年が明けて間もなく、比較的あたたかい日の朝。実家に戻っていた私は、次の日に仕事始めを控えており二階の自分の部屋でUターンの荷造りをしていた。何事かと階段を途中まで降りかけ聞こ…

ピンク映画の古傷

19歳の冬、4つ年上の彼氏がいた。同じサークルの先輩で、最盛期のポール・サイモンを彷彿とさせる影のある、彫りの深い顔立ちの人だった。ありとあらゆる映画に詳しく特に60〜70年代の映画を好んだ。私たちのデートのほとんどは都内のミニシアターか…